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教育ニュース
先生方が日々感じるように、教育現場は今、大きな転換期を迎えています。 次期学習指導要領の改訂が私たちに突きつけているのは、「何を知っているか」ではなく「その知識を人生や社会でどう使えるか」という、教育のゴールそのものの問い直しです。
文部科学省の論点整理案(2025年9月)は、単なる知識の詰め込みではなく、子どもたちが予測不能な未来(Society 5.0)に主体的に対応できる「思考力や人間性」を育むことを求めています。つまり、授業の目指す場所は「知識の獲得」から「理解と洗練」、すなわち「わかる!使える!」という実践力へのシフトなのです。
GIGAスクール構想が定着し、教室は「デジタル前提」となりました。しかし、この環境が定着したからこそ、情報モラル教育は「抜本的な強化」が不可欠です。
目標は「デジタルシチズンシップ」へ
指導の目標は、「ネットの危険を避ける」だけでなく、一歩進んで「デジタル社会の市民として、どう社会に貢献するか」という「デジタルシチズンシップ」の育成に移っています。
AI時代の負の側面への対処
特に2025年9月の論点整理では、生成AIなどの長時間利用が「認知や行動に与えるリスク」といった、デジタル化の「負の側面」にも教師が対処することが明記されました。子どもたちに「適切なデジタルとの距離の取り方」や「情報の真偽の見極め方」を自己調整させる力が求められています。
道徳教育は、デジタル社会という「倫理的な正解が見えにくい時代」において、生徒の「心の基礎力」を培う役割を担っています。
議論を深めるカギは「葛藤」
特別の教科「道徳」の定着により、生徒が授業で意見を活発に出し合うようになったのは事実です。しかし、多くの先生方が「複雑な問題になると議論が深まらないまま終わってしまう」という課題を抱えています。文部科学省の論点整理案(2025年9月)は、この課題を乗り越えるために、教師が「多様な理由や対案」を引き出しやすいよう、明確な倫理的葛藤(ジレンマ)を含む教材を意識的に選ぶべきだと提言しています。
「自分ならどうするか」を徹底的に問う
道徳教育が目指すのは、「生徒が、自分ならどうするか?と葛藤するプロセス」です。SNSトラブルやAIの倫理といったデジタル社会の課題は、まさに白黒つけられないジレンマの宝庫です。生徒が「正解のない問い」に向き合い、自分の考えを言語化し、他者の多様な価値観を理解するという深いプロセスこそが、デマやフェイクに流されず、デジタル社会を生き抜くための「心の基礎力」を育むのです。
指導内容が高度化・増加する中で、先生方の「授業準備の負担」が増しているのは深刻な問題です。次期指導要領の実現には、教師と生徒の双方に「余白(時間的余裕)」を生み出すことが不可欠とされています。
授業時数の柔軟化
この「余白」を生み出す具体策として、2025年9月の審議資料では、学校側で授業時数を柔軟に調整できる「調整授業時数制度」の先行導入案が示されました。これは、先生方が教材づくりに追われる時間を減らし、子どもたちとの「対話や議論の促進」といった指導の核に集中できるための重要な一歩となります。
次期指導要領が求める「AI時代のデジタル市民性」の育成と「深い議論」の実践は、最新の事例と質の高い教材があってこそ実現します。2025年10月下旬に発売される『SNS情報モラルドリル』は、先生方の「余白」を確保しつつ、最新の指導ニーズに応える実践的な教材です。
葛藤を呼び起こすリアルな事例
本教材の「第7話 それってあなたの発表ですか?」は、まさに上記のようなAI利用における倫理的葛藤をテーマにしています。中学生の“リアル”なトラブルをマンガで提示することで、論点整理が求める「明確な倫理的葛藤」を生徒が「自分ならどうする?」と迷う具体的な状況を提供します。
思考を深めるワーク設計
各ページは、この葛藤をドリルに書き出して言語化するワーク形式になっており、議論が表面化することを防ぎます。これにより、先生方は、生徒の初発の思考を足がかりに、「対話や議論の促進」という指導の核に集中することができます。
先生の負担を大幅削減
道徳・総合・学活のいずれでも4〜5時間で完結する設計です。さらに、詳細な指導案も無料でダウンロード提供されるため、多忙な先生方が教材研究に時間を割くことなく、すぐに質の高い情報モラル教育を実践できます。
次期指導要領の理念を具現化し、子どもたちの「生きる力」を育む実践的なツールとして、ぜひ本教材の活用をご検討ください。
教材名:SNS情報モラルドリル
仕様:B5判・本文24ページ・オールカラー
定価:330円(本体300円)
発売予定:2025年10月下旬
監修:藤川大祐(千葉大学教育学部教授)
【ご注文・お問い合わせ】
日本教科書(株)☎03-3518-6345
info@nihon-kyokasho.co.jp
本記事は、主に以下の最新資料および報道に基づいています。
●文部科学省/教育課程企画特別部会 論点整理(案)
●文部科学省/教育課程柔軟化サキドリ研究校事業 概要
【日本教科書編集部】