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友達と恋愛、どっちが大事? マンガ動画教材「チェンジャーズ」を使った授業実践レポート

2026.01.15

中学校に入学し、人間関係が急速に広がり、そして深まる1年生。小学校時代とは異なる「距離感」や、スマートフォンを介したコミュニケーションに戸惑う生徒も少なくありません。

今回は、千葉大学教育学部附属中学校の1年生を対象に行われた、動画教材『チェンジャーズ』を用いた道徳の授業実践をご紹介します。テーマは「仲間とより良い関係を築くために大切なこと」。友情、恋愛、そしてSNS上のトラブルが複雑に絡み合う現代的な課題に対し、生徒たちはどのように向き合ったのでしょうか。

 

そもそも『チェンジャーズ』とは?

今回使用された『チェンジャーズ』は、「いじめや人権、話し合おう、変えていこう。Changers(チェンジャーズ)」という、いじめ防止教材開発のプロジェクトで制作された教材の1つです。

https://wearechangers.jp/

制作・監修には、当サイト(日本教科書)にもご寄稿いただいている千葉大学教育学部の藤川大祐教授、授業づくりを専門としている敬愛大学教育学部の阿部 学准教授、児童書をはじめとする多角的なメディア制作を手がける303BOOKS株式会社が携わっています。
  • 誰でも無料で使える: ウェブサイト上で動画や指導案が公開されており、登録不要ですぐに授業や家庭で活用できます。
  • 考えさせるマンガ動画教材 「こうしなさい」という正解を押し付けるのではなく、身近なトラブルをマンガ動画教材で描き、「自分ならどうするか」を子どもたち自身に考えさせる構成になっています。

今回は、この教材を使って、実際に生徒たちがどのような議論を交わしたのかを見ていきましょう。

導入:教室の空気が緩む「気まずい瞬間」の共有

授業は、先生の軽快な問いかけから始まりました。「友達と話していて、気になったり、気まずくなったりした瞬間はある?」

「話題が自分の知らないものだった時、会話に入れない」

「内輪で盛り上がっている時に、知らない子が来た時」

「話題が尽きてしまった時」

生徒たちからは次々と共感の声が上がります。先生は「無理に話さなくていい」と心理的安全性を確保しつつ、人間関係における「あるある」を共有させることで、これから始まる少し重たいテーマへのハードルを下げていました。

今回のテーマ:『友だちと恋愛、どっちが大事?』

今回視聴したエピソード(No.17)は、タイトルこそキャッチーですが、描かれているのは非常に現代的でシビアな問題です。

【あらすじ】 仲良し3人組の「カエデ」「ミユキ」「アユ」。ずっと一緒だった3人ですが、アユが内緒で男子生徒(オカダ君)と付き合い始めたことが発覚します。

  • カエデの怒り:「ずっと一緒だったのに水臭い」「彼氏とかいらないって言ってたのに」という疎外感。
  • アユの事情: 言い出すタイミングを逃していた気まずさ。
  • ミユキの行動: 2人の板挟みになり、良かれと思ってアユとのLINEのやり取りをスクショしてカエデに転送してしまう。

この動画を見終わった直後、教室には「ああ…」「これは気まずい」といったリアクションが広がりました。

展開:SNS時代の「正義感」と「すれ違い」

授業の中心は、この3人の行動の中に「どのような問題が生じているか」を掘り下げる議論でした。

「謎の正義感」によるスクショ転送

特に議論が白熱したのは、仲を取り持とうとしたミユキが「個人のLINEのスクリーンショットを無断で転送した」という行動です。

  • 生徒の声:「なんとかしたいという正義感はわかるけれど、スクショを送るのは違う」
  • 生徒の声:「個人のやり取りを勝手に晒されたら、話しづらくなる」
  • 生徒の声:「“謎の正義感”で関係を壊しそう」

「良かれと思って」行ったデジタル上の行動が、信頼関係を決定的に壊す可能性がある。この点に多くの生徒が鋭く反応していました。

「ずっと一緒」の呪縛

また、カエデが抱く「私たちはずっと一緒だよね」という同調圧力についても意見が交わされました。 男子生徒からも「そういう(ずっと一緒みたいな)のは女子特有かもしれないけど、男子でもある」「誰と付き合おうと関係ないと思うけど、言わなきゃいけない雰囲気があるのもわかる」といった意見が出され、中学生特有の「グループの結束」と「個人の変化」の板挟み状態が言語化されていきました。

感情のコントロールとデジタル

カエデが感情的になり、LINEですぐに反応してしまった点については、「一回落ち着くべき」「自制心が必要」という意見が出ました。 中には「ChatGPTに聞いて一回冷静になる」という、まさに令和の生徒ならではのユニークかつ現実的な解決策も飛び出し、教室が笑いに包まれる場面もありました。

終末:自分ならどう行動するか?

授業の最後、生徒たちは「仲間とより良い関係を築くために大切なこと」を自分事として考えました。

  • 「自分のことばかり考えず、相手の事情を想像する」
  • 「些細なことでも、相手がどう受け取るかを考えて行動する」
  • 「信頼されるために、隠し事をしない。でも、言いづらいことは察する」

これらは教科書的な答えではなく、『チェンジャーズ』のリアルなシチュエーションを通じて悩み抜いたからこそ出てきた、生きた言葉でした。

まとめ:情報モラルと道徳の融合

授業後のインタビューで、生徒は「小学校の道徳とは違い、LINEのトラブルなど、家で一人で悩むようなことが扱われていて身近に感じた」と語っていました。

今回の授業で特筆すべきは、「人間関係のトラブル」と「情報端末の使い方」が不可分であるという現状が自然に扱われていた点です。

「気まずさ」を回避する特効薬はありません。しかし、今回のように「あるある」を教室で共有し、客観的に分析する経験こそが、生徒たちが実社会で直面するトラブルを乗り越えるための力になるのではないでしょうか。


取材協力/千葉大学教育学部附属中学校、スタンドバイ株式会社

(日本教科書編集部)