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夏休みのスマホが危ない!──TikTokの“ひとネタ”が事故を呼ぶ

2025.07.04

期末テストが終わり、待ちに待った夏休み。スマホを片手に自由な時間を満喫できるこの季節は、子どもたちの好奇心が一段と高まります。しかし「ちょっとウケたい」「バズりたい」という軽い気持ちで撮った動画が、大けがや損害賠償につながる深刻なトラブルを招くケースが増えています。とくにTikTokにはスリルをあおる“チャレンジ系”の投稿が多く、中学生が加害者にも被害者にもなりうる点が見過ごせません。
本稿では、国内で実際に起きた中学生によるTikTok事故を四つ取り上げ、危険がどこに潜んでいるのか、そして生徒たちにどう注意喚起すべきかを考えます。

校内消火器噴射事件

【事例概要】 14歳を含む男子4人が授業の合間、廊下の消火器を1本丸ごと噴射。「真っ白で映えるだろ」と撮影し、すぐさまTikTokへ投稿しました。その結果、授業は中断、粉じんを吸入した教員が体調不良を訴え、後片付けには約30万円もの費用がかかりました。4人は器物損壊容疑で逮捕され、弁償費用は保護者が負担することになりました。

事故から学ぶポイント

  • 消火器は〝命を守る器具〟であり、遊びに使えば犯罪。
  • 30万円あれば何ができたか、自分の金銭感覚に置き換えて考える。
  • 学校の備品を壊すことは、他人の物を壊すのと同じ「器物損壊」。
  • 自校で同じことが起きたら授業・行事・安全管理にどんな影響が出るか想像しよう。

出典:サンテレビNEWS『中学生4人が校内で消火器噴射 TikTok投稿で逮捕』(2025年2月14日放送)ほか各社報道を総合

 

渋谷「白煙ジャック」事件

【事例概要】 深夜の渋谷スクランブル交差点で、無職の29歳男と15歳少年が無免許バイク2台で旋回しながら消火剤を噴射し、その様子をライブ配信しました。再生数は跳ね上がりましたが、わずか1時間後には道路交通法・火災予防条例違反で現行犯逮捕されました。バイクは没収され、損害賠償請求も検討されています。少年は「大人が一緒なら大丈夫と思った」と供述したと報じられています。

事故から学ぶポイント

  • 「未成年だから守られる」は誤解。少年も現行犯逮捕。
  • 大人と組むと行為の悪質性が強調され、共犯として罪が重くなる場合がある。
  • 逮捕歴は進学・就職に長期的な悪影響を及ぼす。

出典:読売新聞オンライン『渋谷スクランブル交差点でバイク暴走、消火器も噴射…無免許運転の容疑で男子高校生ら2人逮捕』(2024年12月30日)kumin.news

 

劇物ラムネ・ドッキリ事件

【事例概要】 新潟県五泉市の中学校で、理科実験で余った水酸化ナトリウムを中3男子が「ラムネだよ」と下級生に配布し、その瞬間を動画撮影しました。下級生2人は口の中を火傷し、救急搬送されるという痛ましい事故が発生。動画には「#激ヤバ実験ラムネ」のタグが付き拡散されましたが、後に薬品管理と指導体制が全国ニュースで厳しく取り沙汰されました。

事故から学ぶポイント

  • 水酸化ナトリウムは皮膚に触れても危険な劇薬。「ドクロマーク」は命の警告。
  • 理科室の薬品や家庭の洗剤にも同様の危険がある。
  • 他人の命・健康を危険に晒す行為は“ドッキリ”ではなく犯罪。

出典:FNNプライムオンライン『危険 悪ふざけでは済まされず…中3男子生徒が“水酸化ナトリウム”を下級生に食べさせる』(2025年4月27日)fnn.jp

 

まだ続く!スーパーマンチャレンジ事故

【事例概要】 友人3人が一人を2~3m放り投げ、空中で“飛行ポーズ”を決める――それが失敗し、東京都内の中2男子は両手首骨折と前歯欠損、全治2か月の重傷を負いました。投げた3人も「加害者」として損害賠償の対象になっています。同様のチャレンジによる首の捻挫や頭部打撲の報告は沖縄や青森でも相次ぎ、いくつかの学校が「TikTok禁止令」を校内通知する事態に至っています。 [参照:asahi.comなど]

事故から学ぶポイント

  • 骨折や歯の欠損は治療に時間と費用がかかり、後遺症が残ることも。
  • 友人を巻き込めば自分も加害者に。
  • 危険行為を止める勇気が“真の友情”と自分の未来を守る。

出典:朝日新聞デジタル『TikTok「スーパーマンチャレンジ」でけが続出 禁止する学校も』(2024年12月26日)asahi.com

 

まとめ──「バズり」は一瞬、「責任」は一生

ここに挙げた四つの事件には共通点があります。

  1. スマホを構えた瞬間、現実の危険が見えなくなる。
  2. 仲間内のノリや「バズりたい」という誘惑が“ブレーキ役”を消す。
  3. 法と金銭的な賠償、そして心身への後遺症は「投稿後」に重くのしかかる。

夏休みは自由と同時に〈行動の責任〉が膨らむ季節です。SNSの動画投稿は、承認欲求を満たす手軽な手段のように見えて、実は大きな危険と隣り合わせです。撮影ボタンを押す前に、「その動画、本当に大丈夫か?」「3年後の自分は、今日のこの行動を笑えているか?」と立ち止まるクセを、クラス全員で共有しましょう。それだけで事故の芽は、ぐっと小さくなります。