教師用指導書

教師用指導書は、学校・教育委員会以外には販売できません。
学校・教育委員会の皆様は、各学校へ出入りの書店、各都道府県の教科書特約供給所にてご注文ください。

監修者より

日本教科書版中学校道徳教科書教師用指導書の使用に当たって
指導書の功罪指導書の固定概念から解放されなければならない教師

教師用指導書 監修者:金沢工業大学教授 白木みどり


 指導書は、教師が授業づくりをする上でのねらいや指導過程の参考事例を得ることができるという点で意義があります。また、指導書によっては、教材関連のコラムなどにより、教師が教材の主人公や社会的背景等の内容を深く理解しようとする際に有効に働きます。しかし、指導書の指導案の多くは、道徳に携わってきた教師が机上で考えているものが多く、指導書の提案授業をそのまま実践に移すことは、非現実的ではないでしょうか。そのため、現実の授業実践に支障をきたすことは否めません。


特に、指導過程における発問の数が多い場合などは、提案通りの発問を授業に反映させようとすると、時間内での取組は困難を極めます。発問数の多い指導案の実践は、生徒の実際の反応を阻害することになりかねないばかりか、教材の内容理解だけに留まってしまいます。また、発問ごとに書かせる作業を提案しているワークシートは、ともすると「書かせたものを発表させて終わり」という単調な授業や指導のマンネリ化を生みかねません。


 例えば、筆者が委員を務めた文部科学省の「道徳教育の充実に関する懇談会」がまとめた報告書『今後の道徳教育の改善・充実方策について -新しい時代を、人としてより良く生きる力を育てるために-』(道徳教育の充実に関する懇談会、平成25年)においては、「各学校においては、特定の指導方法を絶対化することなどにより、道徳教育の授業が画一的なものとなったり、教師の一方的な押しつけにつながったりすることのないよう留意しつつ、柔軟でバランスの取れた指導方法の開発・実践に努めていただきたい。」と述べています。したがって、道徳授業の特質を鑑みれば、指導書が提案する授業の絶対化は、あってはならないということです。


 従来から、筆者は、道徳の指導書に疑問を抱き、書き込まれすぎている指導書による弊害を強く感じてきました。道徳授業に慣れていない教師や若手教師が、指導書通りの発問に立ち止まり、授業することが最善であるかのような誤った解釈に陥りやすいのです。
 それは、指導過程だけではなく、板書計画案などにも該当します。板書の目的は、1時間の指導過程において、教材から得られた気づきや学びを提示し理解させることにあります。そのためには、教材の構造を共感や対立、葛藤、統合、発展等の視点から分かり易く視覚化することが求められます。いわゆる「構造的な板書」です。「構造的板書」には、これまでの指導書が採用してきた教材のストーリーを時系列で押さえていく「川流れ式」の従来型板書では得ることのできない、子どもの気づきや解釈を引き出す効果があります。


 指導書の板書例においては、教材の構造を端的に示すことが、最重要事項であり、書き込めば書き込むほど、教師の価値観を固定化し狭めていくことにつながります。「考え、議論する道徳授業」が謳われ、子どもの主体的思考と言語表現を重視しているにもかかわらず、教師の価値観にはまらない意見は切り捨てられていくという授業に遭遇する度に、ステレオタイプの価値観の呪縛から解き放されたオリジナリティ溢れる道徳授業を実践することの必要性を痛感しています。
 概ね道徳教材は、恣意的に作成、編集されており、教師が介入せずとも、教材を読むことを通して、子どもの思考ベクトルは、自然に内容項目の道徳価値へと向かうことの方が多いです。
 『道徳に係る教育課程の改善等について(答申)』(中央教育審議会、平成26年)では、「道徳教育の本来の使命に鑑みれば、特定の価値観を押しつけたり、主体性をもたず言われるままに行動するよう指導したりすることは、道徳教育が目指す方向の対極にあるものと言わなければならない。むしろ、多様な価値観の、時に対立がある場合を含めて、誠実にそれらの価値に向き合い、道徳としての問題を考え続ける姿勢こそ道徳教育で養うべき基本的資質であると考えられる。」とあります。


 教師の価値観に忖度し答え探しをする道徳授業にならないよう、子どもが主体的に思考し、安心して自分の考えを表現するためには、教師自身の道徳授業に対する意識改革が必要不可欠です。道徳授業は、内容項目を知識理解させるのではなく、多様な事象に内在する内容項目について考える、いわば「道徳的価値についての思考経験の場」なのです。
 
従来の道徳授業では、指導書に縛られているケースがあまりにも多く、教科化を機に教師の柔軟な発想とイマジネーションを大切にできる指導書開発を意図してきました。作成に当たっては、迷いはありましたが、教師用教科書の大量の赤字書き込みや、焦点化しきれない赤線はあえて排除し、教材の構造を示すにとどめました。教師は、子どもと共に考えていくのが道徳授業の特質だからです。書き込まれすぎた指導書の絶対化により生じる弊害は、我々教科書の作り手達が、意図的に操作していかなければならないでしょう。


本指導書については、以下の特徴が挙げられます

〇教材の読後、誰もが短時間で端的に理解できるようすっきりとポイントを重視し、掲載事項を厳選している
〇子どもの思考や話し合いを大切にし、教師のしゃべりすぎや一方的な押しつけの授業を避けるための指導過程を提案している
〇現場教師の試行授業を通して、精選された発問を提示している
〇実際の子どもの反応や発言から、中心発問を吟味している
〇議論が成立する主発問を設定し、話し合いを重視した指導過程にしている
〇基本型等の特定の指導方法にとらわれない指導過程を提案している
〇板書案を通して、教材の構造を示している
〇板書案を通して、主人公、登場人物のストーリー内のポジションを設定している
〇カリキュラム・マネジメントに柔軟に対応するため、目次立てが内容項目のカテゴリーに準拠しているとともに、本時との関連事項を提案している

 本指導書は、図らずも>実際に授業実践を重ねてきた教師達の問題意識から生まれたものです。教師の授業力、指導力向上のためには、教師の柔軟な発想や生徒との関係性の構築を阻害するようなものであってはならないと強く思います。

Simple is Best

 道徳授業は、教師によってピカピカに磨かれたレールの上を走らせるのではなく、よりよい生き方を目指す生徒と教師が、枕木の一本一本を敷きながら行く手を創り上げていくようなものです

本指導書の特徴

  • 1端的に理解できるようポイントを重視した構成
  • 2子どもの思考や話し合いを促す指導過程を提案
  • 3現場の教師の試行授業から精選された発問の提示
  • 4試行授業の子どもの反応や発言から吟味した中心発問
  • 5議論が成立する主発問の設定
  • 6基本型などの特定の指導方法にとらわれない指導過程を提案
  • 7板書案を通して、教材の構造を提示
  • 8板書案を通して、登場人物のポジションを設定
  • 9カリキュラム・マネジメントに柔軟に対応